■流出客を戻したDM。
 そこに秘められたコピーの真髄



数ヶ月以上注文がないお客様を、通常「流出客」と呼びます。
どこからを流出客と定めるかは、取り扱っている商品によって異なります。1箱30日分のダイエット食品であれば、半年〜1年注文がなければ、流出客と見なしていいでしょう。


私がミネラルウォーターを販売していた頃、2年間ご注文がないお客様は流出客と見なしていました。流出客にはDM類を一切送らないようにします。コストの無駄になるからです。

私はあるとき、流出間近のお客様から、なんとか注文を取れないものかと考えました。思い付いたアイディアが、これから解説する「最後のご案内」です。


私は、「最後のご案内」と題したDMを流出間近のお客様に送付しました。本文はこう綴りました。「何度が商品のご案内をお送りしましたが、ご注文がありません。もしこのお手紙を読んでご注文がなければ、あなた様には金輪際、郵便物を送りません。そのため、これが最後のご案内となります」。

読んでの通り、大変失礼なDMです。ですが、なんとこのDMで約5%強のお客様が注文をしてくれたのです。ただこのDM、特異な現象が一つありました。それは、クレームと注文がセットだったということです。

「何よこの手紙は! 最後通告みたいじゃない。本当に失礼ね。どういうことなのよ、これ。……はぁ、まあいいわ。1箱頂戴」と、8割のお客様は、クレームと一緒に注文をしてくれたのです(2割は、クレームのみでした)。

電話注文を受けていた50歳半ばの男性社員は、「今まで色んな電話を受けて来たけど、クレームと注文がセットの電話をこんなに受けたのは、はじめてだ」と苦笑いしていました。

私の腹積もりはこうです。「どの道、流出するお客様だから、怒らせてもいいから電話させるように仕向けよう。不評を買っても、実害はないな」。


この例は少し過激かもしれません。しかし、だからこそコピーライティングの真髄がひときわ表れています。

コピーライティングの最終目的は、「お客様を行動させること」です。人が行動するためには、何かしらの感情エネルギーが必要です。そのため、コピーを書く者は、読者(お客様)の感情を喚起させなくてはいけません。
セールスライターは、「○○という感情を抱かせ、△△の行動をとってもらう」という具体的な意図を持って書くことが大切なのです。ところが、多くのセールスライターの書くコピーには、この感情の部分が抜け落ちています。

今回の例は、「怒り」と「焦燥」の感情を喚起させた事例です。
一方的な文面を送り付けたため、お客様は当然「怒り」を覚えました。それと同時に「焦燥感」も抱かせました。こんな失礼な文面を送ってよこすのだから、本気で「これが最後」だと伝わったのです。

この「本気」について一筆書き添えておきます。
私は、多くのセールスコピーを読みますが、「本気」が伝わってきません。みんな、テクニックで書いているのです。

「特別なお客様へ」と題した案内の宛名を、印刷文字で送ってくる人がいます。私は、特別なお客様には、少なくとも名前を手書きで書いて送るのが基本だと思い、いつもそうしてきました。なぜなら、そうしなければ、そのお客様を特別に思っていることが伝わらないからです。

「限定」と謳うコピーはいたるところで目にします。しかし、読者(お客様)からはこう思われています。「どうせ、売るためのテクニックなんでしょ」。見透かされているのは、「限定」に本気さがないからです。

謝罪する際、プリンターで印刷した謝罪文を送ってくる人がいます。この人は本気で謝罪していません。謝罪文は、便箋に謝罪の言葉を手書きして、はじめて本気が伝わるのです。

どんなに優れたコピーでも、「本気」が伝わらなければ浅薄なコピーに成り下がります。言葉と態度はセットです。
たとえば、「好きです」の言葉も、どんな態度で言うのかで、全く意味の違っ
たものになります。態度は言葉の意味を大きく変える力があるのです。


コピーライティングとは、「○○という感情を抱かせ、△△の行動をとってもらう」という具体的な意図を持って書きます。そこに、本気(態度)が合わさって、はじめて読者の心に届くコピーになるのです。
「本気」がないコピーは、言葉を飾り立てた、ただのメッキなのです。




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