ここ近年、「セールスコピー」という言葉が浸透してきました。
Googleのキーワードプランナーで調べてみるとその浸透性がよく表われています。
2014年1月の検索数2,170件に対して、5月6月の検索数は7,000件超。なぜ、「セールスコピー」の言葉が突然注目を集めるようになったのでしょうか。おそらく、経営コンサルタント・神田昌典氏が5月に出版した『禁断のセールスコピーライティング』の影響と考えられます。検索数が伸びた時期と出版の時期が丁度重なります。出版物、そして神田氏の影響力の強さをうかがわせる一例とも言えます。
私は「セールスコピー」が多くの人に知れ渡ることに歓迎です。「イメージコピー」は知っていても、セールスコピーを知らない人が今まで多かったからです。
広告コピーは2種類あります。「イメージコピー」と「セールスコピー」です。「イメージコピー」は、広告代理店のコピーライターが書くような、洗礼されたコピーを指します。
たとえば、ジブリ映画「魔女の宅急便」のコピー「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」(糸井重里氏)や、明治製菓の広告コピー「人生が、ラブストーリーでありますように。」(山田尚武氏)などがそうです。セールスコピーはこれらとは違います。
洗礼さなどはなく、むしろ泥臭い。客の欲求を赤裸々に描写し扇動して商品の購入へと誘発します。セールスコピーの有名な例として「家はまだ買うな!」がありますが。このように、欲求に直球で訴えるコピーが多いのが特長です。
何を持ってセールスコピーと定義するのか。
第一に、DRM(ダイレクト・レスポンス・マーケティング)に立脚したコピーかどうかです。DRMとは科学的なマーケティングです。コストに対してどれほどリターンがあったのか、または、コピーを変えたことでどれほど収益性が変化したのかを粒さに計測・検証します。これを幾度となく繰り返し、成功法を導き出して収益増を図ります。収益の因果関係がこれほど明確に分かるマーケティングは他にないでしょう。
セールスコピーとは、このDRMに立脚したコピーなのか、そうでないのかが大きな分かれ目になります。つまり、売上増を直接的な目的にしていない、計測していないコピーは、セールスコピーではありません。
第二に、コピーの良し悪しは、お客の反応で決めているかどうかです。
たとえば、メルマガ読者が10,000人いたとしましょう。5,000人のグループ、AとBを作り、キャッチコピーを変えてメールを送ります。AよりBの反応が良ければ、Bのキャッチコピーを採用して次回のメルマガや別のリストに使用します。このように、コピーの良し悪しはお客の反応で決めます。決して、コピーを書いた者や企業側の感情や思惑が入り決定されることはありません。
この二点(DRMに立脚している・良し悪しはお客が決めている)を満たしているコピーを「セールスコピー」と称します。
先ほど上げた定義に照らし合わせても、糸井氏のコピーや山田氏のコピーは、セールスコピーでは無いことが分かります。DRMに立脚しているわけでもなければ、お客の反応を見てコピーを採用しているわけでもないからです。
おそらく、コピーを一本決めるのに何十本、もしくは何百本のコピーを書き、その中から一本のコピーを採用しているのでしょう。ですが、コピーの採用を決めているのは広告代理店であって、お客(エンドユーザー)ではありません。また、そのコピーが収益にどれほど影響をもたらしたのかも計測していないし、そもそもできません。
語弊があってはいけないので補足しておきます。
私はイメージコピーを否定しているわけではありません。目的と企業の規模感の違いによって採用するべきコピーの種類が違うだけです。大手企業は中小企業と違い、予算、認知度、信用などが異なります。イメージアップを図り、マスレベルでブランディングを図るのは大切な戦略でしょう。しかし、中小企業がそれを真似すると途端に破綻します。中小企業は短期間で着実に収益アップを図れるマーケティングを採用しなくてはなりません。こうした状況の違いにより、採用すべきコピーの種類は異なるのです。
今後、「セールスコピー」という名詞は広がっていくでしょう。それにともない、「セールスコピーとイメージコピーってどう違うの?」という疑問を持つ人も出てくるだろうと思い、その違いの述べさせていただきました。以上です。